2011年01月24日

第8話 ジュードー・カラテ?

  食事から様々な衝撃を受けたものの、衝撃はとどまる事をやめなかった。
  三日後の朝、朝食をとりにホテルのレストランに行くと、レストランの主任と思われる 青年が近づいてきた。

 「オ――ジュードーカラテ!」

  その青年は、いきなり意味不明な言葉を浴びせてきた。そして、いきなり現地の新聞を取り出すと、

 「あんたが載っているよ!」

  と、パキスタンなまりの英語で話しかけてきた。そして、またもや、「ジュードーウカラテ!」と叫んでくる。そのジュウドウカラテの意味がわからない私は、「ノージュードー」と、彼に訂正を求めると、

 「オーケー、ジュードーカラテ」

  と、またもや同じ言葉を繰り返してきた。

 「だから!じゅ・う・ど・う」

  と、頭にきて興奮した私は、彼に伝えたのだが、彼は勢いを増して、

 「オーケージュードーカラテ」

  と言いながら、カラテのケリのまねをしながら、相変わらずジュードーカラテーと、叫んでいた。 切れた私は、背負い投げのまねをしながら、

 「だから……ジュードー。わかる?ジュードー!」

  と、日本語で切れながら叫んでいた。

 「アンダスターンド・ジュードー」

  と、今度はパンチのまねをしてきた。負けた。はっきり言って完敗。どうも、この国では柔道と空手が混同されているようだ。

  根負けした私は、フライドエッグを食べながら、何も言う気にはなれなかった。
  後日、道場の壁を見ると、指導者のカディールが、柔道着を着てジャンプしながらキックをする姿が……。

 「はあ? どういうこと?」

  全く理解が出来なかった。そして、数分後。ナディームに写真の真実を問いかけると。

 「ワタシ、カラテノセンセイデス」

 「はあ?なんでカラテノセンセイなの?」

 「ワタシ。ジュウドウノセンセイ。カラテノセンセイ」

 「意味わからん!」

  しかし、後日その答えがわかった。我々の柔道の時間が終わると、彼の元には空手着を着た生徒が集まっていた。

 「そうなのか………」

  パキスタンの主な道場では柔道と空手の両方を教えていた。だから、市民の間では、柔道も空手も混同されているようだ。
  恐るべきパキスタン…そして、ジュードーウカラテ。文化が間違って伝わると、ジュードーといいながら、キックもパンチも繰り出す人間がいることを、初めて知ることとなった。 だが、ここで妥協をするわけにはいかない。

 「ジュードーに、パンチやキックはないんだ!」

  早朝のレストランで、延々と説教をする日本人一人。その日本人を、誰も止めることは出来なかった。

abc123da at 17:59コメント(1)トラックバック(0) 

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1. Posted by なまはげ   2011年02月18日 09:11
日本人=ちょんまげの世界ですね(笑)

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