2011年02月09日
第14話 神のいたずら?
パキスタンに来て一ヶ月がたった。今日は、住み慣れたラホールのシャリマホテルを離れて、首都イスラマバードに二泊三日の出張。内容は、パキスタン駐在大使や大使館関係のお偉いさん、パキスタン政府のお偉いさんを招いて、俺と生徒でデモンストレーションをやるというのだ。つまり、柔道の普及活動の一つ。
バッグに衣類その他をつめて、ホテルのロビーで生徒を待っていたときのこと………。
「おい、タクシーいるか?」
(え……、おい、タクシーいるか?)
「多分いるよ。さあ、行くか」
(え……もしかして、日本語?)
私は、状況がつかめないままに、声のする方向を見た。そして、そこには……アジア人の男性が二人…
(もしかして……日本人か?)
二人の男性は、出入り口を目指して、私に背中を向けていた。
(あれは……絶対に!日本語だったよな!)
俺は走った。二人の背中を目指して走った。もしかしたら、聞き間違いなのかもしれない。正しい日本語を……正真正銘の日本人を、もう一ヶ月も見ていない。
数百万人もいるラホール市民の中で、聞くところによると、日本人は十人しか滞在していないと、出発前に聞いていた。町中を走り回っても、絶対に会えないと思っていた日本人が……いや、もしかしたら、願望からくる妄想かも知れないが、俺はダメ元で二人の背中を追った。
そして………「日本人ですか!」と、叫んだ。その二人は……私のほうに振り返り、
「あれ??珍しいね!」
と、明らかに正しい日本語を使うではないか!
(生きていて、良かった!)
これほど日本人であったことを、うれしく思ったことはなかった。
「すいません……なんで、ここにいるんですか?」
「仕事だよ。もう二ヶ月もこのホテルにいるよ」
「え……?二ヶ月も? もしかして、このホテルに?」
「ああ……二ヶ月前から泊まっているよ」
なんということだ!一ヶ月前に来た、私より先に、このホテルに日本人がいたとは!なんで、なんで出会わなかったんだ!
「日本のどこから来たんですか?」
「知っているかな?茨城県の取手という所なんだけど」
「え!取手ですか! 俺は…俺は……」
涙が出そうになった。まさか、同じホテルに日本人が住んでいたことに、ビックリするだけではなく、同県人とは……。それも、同じ県南地方の取手とは……。
常磐線の、荒川沖駅(私の最寄り駅)から、わずか二十分……四つ目(当時はひたちの牛久駅が無かった)の駅。俺は心の中で叫んだ。
(神様は、俺を見捨てなかった!)
パキスタンで日本人一人。寂しい日本人を、見捨てなかった。それに、同県人とは……。
出会いは遅かったものの、神様は、最高のプレゼントをくれたのだった。俺は心の中で叫んだ!
(アイ・ラブ・イバラキケン!!!)
だが、神様は………単なるいたずらだったのか?
続く……
次回、第15話は2月16日(水)更新となります。
バッグに衣類その他をつめて、ホテルのロビーで生徒を待っていたときのこと………。
「おい、タクシーいるか?」
(え……、おい、タクシーいるか?)
「多分いるよ。さあ、行くか」
(え……もしかして、日本語?)
私は、状況がつかめないままに、声のする方向を見た。そして、そこには……アジア人の男性が二人…
(もしかして……日本人か?)
二人の男性は、出入り口を目指して、私に背中を向けていた。
(あれは……絶対に!日本語だったよな!)
俺は走った。二人の背中を目指して走った。もしかしたら、聞き間違いなのかもしれない。正しい日本語を……正真正銘の日本人を、もう一ヶ月も見ていない。
数百万人もいるラホール市民の中で、聞くところによると、日本人は十人しか滞在していないと、出発前に聞いていた。町中を走り回っても、絶対に会えないと思っていた日本人が……いや、もしかしたら、願望からくる妄想かも知れないが、俺はダメ元で二人の背中を追った。
そして………「日本人ですか!」と、叫んだ。その二人は……私のほうに振り返り、
「あれ??珍しいね!」
と、明らかに正しい日本語を使うではないか!
(生きていて、良かった!)
これほど日本人であったことを、うれしく思ったことはなかった。
「すいません……なんで、ここにいるんですか?」
「仕事だよ。もう二ヶ月もこのホテルにいるよ」
「え……?二ヶ月も? もしかして、このホテルに?」
「ああ……二ヶ月前から泊まっているよ」
なんということだ!一ヶ月前に来た、私より先に、このホテルに日本人がいたとは!なんで、なんで出会わなかったんだ!
「日本のどこから来たんですか?」
「知っているかな?茨城県の取手という所なんだけど」
「え!取手ですか! 俺は…俺は……」
涙が出そうになった。まさか、同じホテルに日本人が住んでいたことに、ビックリするだけではなく、同県人とは……。それも、同じ県南地方の取手とは……。
常磐線の、荒川沖駅(私の最寄り駅)から、わずか二十分……四つ目(当時はひたちの牛久駅が無かった)の駅。俺は心の中で叫んだ。
(神様は、俺を見捨てなかった!)
パキスタンで日本人一人。寂しい日本人を、見捨てなかった。それに、同県人とは……。
出会いは遅かったものの、神様は、最高のプレゼントをくれたのだった。俺は心の中で叫んだ!
(アイ・ラブ・イバラキケン!!!)
だが、神様は………単なるいたずらだったのか?
続く……
次回、第15話は2月16日(水)更新となります。