2011年02月23日
第16話 柔道VSタクシー!
せっかく会った日本人二人とは、10分で別れた。俺達ナショナルチームは、タクシーでラホール駅へと向かった。ザワザワとする駅構内。ものすごい人であふれかえっていた。広い国土ではあるが(地図を見てくれ)、飛行機に乗れるような富裕層は少ない。遠出をするときは、汽車(電車ではない)が主たるようだ。
そして、汽車に乗り込むが、選手は俺達指導陣とは別な車両に向かって行った。
「なぜ?」
どうも、指導陣は一等席。選手は二等席のようだ。だいたい、鉄道で二等席とか一等席など、日本では経験をしたことがなかった。
一等車とは、日本でいうグリーン車か?と、思うが、三等車まであった。この国では、貧富の差が座席にまで位置づけられていた。もっと金持ちは、飛行機での移動だ。
さて、この一等車。日本と比べて別段豪華なわけでもない。ある程度こぎれいな車両に、なぜか引き出し式のテーブルがついている。
「なぜ?」
外を見ると、パキスタンの田園風景が広がったかと思うと、延々と砂漠が続く風景もある。記憶では…不正確だが、四時間か五時間も乗っていたと思う。ぼ――と、外を眺めていると、ある事に気がついた。日本では考えられないほど、汽車のスピードが遅い。もしかして、40㎞か50㎞程度か?スピードスケートの選手なら勝ってしまいそうな速度に感じていた。
隣のカディールに、
「日本では、200㎞以上で走るトレインがあるんだ」
と、言ったところ、なぜか鼻で笑っていた。もしかして、信用していないのか。だが、このあと、もっと衝撃的な事実が訪れた。それは…なぜか、飛行機の機内食のように、男性の車掌のような人が、食事を配りだしたではないか。
(え…なんで、汽車の中で、機内食?)
出されたのは、マトンのカレーにチャパティー。マトンは最も高級料理だから、さすがは一等車。だが、俺はこの手の料理には飽き飽きというか、拒絶反応さえ覚えるようになっていた。たまに食べたら、変わった嗜好で面白いかもしれないが、何度食べただろう!この手の料理を。隣のカディールは、モクモクと食べていた。俺は半分以上残し、ずっと外を見るだけの退屈な時間を過ごしていると、汽車は、目的地のラワールピンディーに到着をした。
イスラマバードに行くのに、なぜかここで降りるという。まあ、言うなりに動くしかない身は、周囲の流れに任せた。そして、汽車から降りようと…………。
「なんだ!!これは!」
俺の目の前には、日本では見たことのない光景が広がっていた!さて、汽車を降りることになった。カディールやジャンギルは、俺の前をすたすたと歩いている。
(さて、降りるか)
何気なく、汽車からホームに降りようと、降りようとしたのだが………。
「あれ?……ホームは?」
なんと……駅のホームが見えない!それに、ホームどころか、駅が見えない!俺の目に見えていたのは、ざわざわとする郡衆。汽車から降りる人、それを迎えに来ている人、降りる人を対象に、ものを売る人、タクシーの運転手や、荷物を運ぶポーターなど。
「いったいどうなっているんだ?」
そして、俺の前にいた指導人は……順番にジャンプをしだした。「トー」と、仮面ライダーのようには叫ばないが、明らかに汽車から飛び降りている。恐るべきラワールピンディー!そこは、駅ではなかった。要するに、駅ではない、普通の広場に、乗客たちは、自由気ままに降りていた。多分、乗る人はいなかったように思う。
そもそも、全国の鉄道に駅があるのは日本だけか?もしかしたら、外国に行くと、駅がないなんて、普通のことか?いまだに調べてはいないが、高度経済成長期に思春期を向かえ、バブルの中で青春を生きてきた俺にとっては、かなり衝撃的な事実だった。
さあ、動揺してもしょうがない。俺らは、何台かのタクシーに便乗して、デモンストレーション会場へと向かっていった。だが、タクシーに乗車をすると、俺はある事実に気がついた。それは………タクシーに料金メーターがないということ…。
パキスタンに来た当事、周りの人たちによく言われていた。「メーターのないタクシーには乗るな」と。だから、いつもメーターを確かめてから乗っていた。二週間もすると、いつもホテルの前にいるタクシーのおじさんが、専属のように待っていてくれるようになっていた。ただ、便利なのはいいが、後部座席のドアがないのには閉口した。でも、パキスタンではそんなことは当たり前。別にビックリするようなことではない。
さて、メーターのないタクシーに乗り込んだ俺と、カディールにジャンギル。俺はドキドキしていた。恐怖ではない。明らかにボッタクリタクシーと思われる運転手と、パキスタン柔道ナショナルチームの指導人。両者はこの後、どんなハプニングを起こしてくれのか? 絶対に、タダではすまないと予想が出来た。
だが、明らかにメーターがないのに、この二人は何も言わなかった。さて、どうなるのか?どうするのか?この国に一ヶ月もいると、アクシデントを楽しめるまでになっていた。しかし、やはり素直に事が終ることはなかった……。
※次回、第17話は3月2日(水)更新となります。ご期待下さい。
そして、汽車に乗り込むが、選手は俺達指導陣とは別な車両に向かって行った。
「なぜ?」
どうも、指導陣は一等席。選手は二等席のようだ。だいたい、鉄道で二等席とか一等席など、日本では経験をしたことがなかった。
一等車とは、日本でいうグリーン車か?と、思うが、三等車まであった。この国では、貧富の差が座席にまで位置づけられていた。もっと金持ちは、飛行機での移動だ。
さて、この一等車。日本と比べて別段豪華なわけでもない。ある程度こぎれいな車両に、なぜか引き出し式のテーブルがついている。
「なぜ?」
外を見ると、パキスタンの田園風景が広がったかと思うと、延々と砂漠が続く風景もある。記憶では…不正確だが、四時間か五時間も乗っていたと思う。ぼ――と、外を眺めていると、ある事に気がついた。日本では考えられないほど、汽車のスピードが遅い。もしかして、40㎞か50㎞程度か?スピードスケートの選手なら勝ってしまいそうな速度に感じていた。
隣のカディールに、
「日本では、200㎞以上で走るトレインがあるんだ」
と、言ったところ、なぜか鼻で笑っていた。もしかして、信用していないのか。だが、このあと、もっと衝撃的な事実が訪れた。それは…なぜか、飛行機の機内食のように、男性の車掌のような人が、食事を配りだしたではないか。
(え…なんで、汽車の中で、機内食?)
出されたのは、マトンのカレーにチャパティー。マトンは最も高級料理だから、さすがは一等車。だが、俺はこの手の料理には飽き飽きというか、拒絶反応さえ覚えるようになっていた。たまに食べたら、変わった嗜好で面白いかもしれないが、何度食べただろう!この手の料理を。隣のカディールは、モクモクと食べていた。俺は半分以上残し、ずっと外を見るだけの退屈な時間を過ごしていると、汽車は、目的地のラワールピンディーに到着をした。
イスラマバードに行くのに、なぜかここで降りるという。まあ、言うなりに動くしかない身は、周囲の流れに任せた。そして、汽車から降りようと…………。
「なんだ!!これは!」
俺の目の前には、日本では見たことのない光景が広がっていた!さて、汽車を降りることになった。カディールやジャンギルは、俺の前をすたすたと歩いている。
(さて、降りるか)
何気なく、汽車からホームに降りようと、降りようとしたのだが………。
「あれ?……ホームは?」
なんと……駅のホームが見えない!それに、ホームどころか、駅が見えない!俺の目に見えていたのは、ざわざわとする郡衆。汽車から降りる人、それを迎えに来ている人、降りる人を対象に、ものを売る人、タクシーの運転手や、荷物を運ぶポーターなど。
「いったいどうなっているんだ?」
そして、俺の前にいた指導人は……順番にジャンプをしだした。「トー」と、仮面ライダーのようには叫ばないが、明らかに汽車から飛び降りている。恐るべきラワールピンディー!そこは、駅ではなかった。要するに、駅ではない、普通の広場に、乗客たちは、自由気ままに降りていた。多分、乗る人はいなかったように思う。
そもそも、全国の鉄道に駅があるのは日本だけか?もしかしたら、外国に行くと、駅がないなんて、普通のことか?いまだに調べてはいないが、高度経済成長期に思春期を向かえ、バブルの中で青春を生きてきた俺にとっては、かなり衝撃的な事実だった。
さあ、動揺してもしょうがない。俺らは、何台かのタクシーに便乗して、デモンストレーション会場へと向かっていった。だが、タクシーに乗車をすると、俺はある事実に気がついた。それは………タクシーに料金メーターがないということ…。
パキスタンに来た当事、周りの人たちによく言われていた。「メーターのないタクシーには乗るな」と。だから、いつもメーターを確かめてから乗っていた。二週間もすると、いつもホテルの前にいるタクシーのおじさんが、専属のように待っていてくれるようになっていた。ただ、便利なのはいいが、後部座席のドアがないのには閉口した。でも、パキスタンではそんなことは当たり前。別にビックリするようなことではない。
さて、メーターのないタクシーに乗り込んだ俺と、カディールにジャンギル。俺はドキドキしていた。恐怖ではない。明らかにボッタクリタクシーと思われる運転手と、パキスタン柔道ナショナルチームの指導人。両者はこの後、どんなハプニングを起こしてくれのか? 絶対に、タダではすまないと予想が出来た。
だが、明らかにメーターがないのに、この二人は何も言わなかった。さて、どうなるのか?どうするのか?この国に一ヶ月もいると、アクシデントを楽しめるまでになっていた。しかし、やはり素直に事が終ることはなかった……。
※次回、第17話は3月2日(水)更新となります。ご期待下さい。