2011年06月05日

第28話 あいつの正体は?(2)

 絶対におかしい。いくら、異国の地パキスタンとはいえ、あのような生き物が、車道を歩いていて、いいものか?周囲の人は、別段気にする様子もない。気にしているのは、俺だけなのか?

 そして、やつとの距離は10メートル。このまま行けば、確実にすれ違うことになる。

「ドクドクドク…」

 心臓は、鼓動をあげてきた。やつは鎖でつながれていた。口には、口輪をはめられ、容易には噛み付けない様子。だが、やつの首につけられた鎖を持っているのは、どう見ても、やつより力の弱そうなやせ細った老人だった。いったん、やつが暴れだしたら、この老人はやつをコントロールすることが、出来るのだろうか?

「絶対に、無理だろう!」

 やつが暴れだしたら、まずはこの老人から餌食になるだろう。そして、距離は5メートルを切った。そもそも、こいつはペットなのか?そんなことも考えたが、動物園でしか見たことのない、日本では絶対にこの距離では見ることのない……やつは!やつは!今、まさに、俺とすれちがった!

 結果……被害なし!だが、多量の発汗と呼吸の乱れ…まあ、その程度でよかった。後ろを振り向くと、俺のことなど全く気にもしないで、やつと老人は、やつの歩く速度にあわせて、ノシノシとすすんでいた。でも、あんなのを…そのまま歩かせといて良いのか?いくらパキスタンでも……

 やつの正体は…正体は…「熊!」熊だよ!日本では、動物園で見るか、山中で襲われでもしない限り、見ることの出来ない熊だよ!ヒグマほど大きくないが、ツキノワグマ程度の茶色の熊。俺は、歩道で熊とすれ違った、数少ない日本人だ。

 そもそも、なんで熊がいたのか?俺なりに調べてみた。現在では、動物愛護団体の厳しい指導によりほぼ消滅をしたらしいが、十数年前までのパキスタンでは、闘犬ならぬ…闘牛ならぬ…「闘熊」という娯楽があったらしい。博打としての要素も持っていたらしく、祭りなどで開催されていたとか…

 今では、地方で、闇の中で開催されているという報道を昨年見たような……まあ、と   にかく、目的は何でも良いが、町の中を、ノシノシと歩く熊。

「熊殺しのウイリアムス?」

  だったっけ、昔、熊と戦った熊殺しの空手家がいたと思うが、柔道家は……完全にビビッテいた。たかが、すれ違うだけなのに…  今でも思い出す。「あの老人!大丈夫かな?」と……

※次回、第29話は6月8日(水)更新予定となります。

abc123da at 11:55コメント(0)トラックバック(0) 

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