2011年07月06日
第33話 ありえない道場!?
「冗談だろう!!」
俺の目に見えたのは、サブアリーナではなかった。階段を上ったところにある、日本語で言うと、「おどりば?」階段を上がって観客席に行くまでに、少し広い場所があるよね?わかるかな?約二十畳くらいのスペース。大きな体育館に行くと、あるよね。その、階段を上がったところにある、約二十畳のスペースに、レスリングマットは敷いてあった。
「カディール!ここでやるの??」
「ハイ・ココデス」
「………」
こんなスペースなら、どこでもいいじゃないか!別に、こんな大きな体育館の、二階の空きスペースを使う必要は、ないじゃないか!
「期待させんじゃないよ!」。俺は、腹が立ってしょうがなかった。
マットの上には、カラチの柔道家が待っていた。その数、約二十人。この二十畳のスペースで、二十人の練習を始めるという。俺は、柱のかげで柔道着に着替えると、選手の前に整列をした。
「レイ」
「オネガイシマス」
日本と同じように、礼がなされ、練習は開始された。準備運動に始まり、回転運動が始まった。先ほどまで腹を立てていた俺も、練習が開始されると、気を取り直して、選手と共に準備運動をやっていた。だが、先ほどから、なにやら不快感が!スペースが狭いのなら、それなりにやればいい。だが、問題はそんなものではなかった。
どうしても気になる。なんなんだ!これは?その原因は、異臭だった。俺の鼻を、「ツーン」と刺激する異臭。なんとも言えない不快感を感じるものの、その異臭の原因が何であるかはわからなかった。まあ、何とかなるだろうと思いながら練習をするが、最初は異臭であった臭いが、だんだん刺激臭に変わっていった。
そして、乱取りをして息が上がるにつれて、刺激臭は俺の鼻を通過して、内臓を不快にしていった。そして、乱取りを十本終えたところで、室内の熱気と喉の渇きに加えて、嗚咽が激しくなってきた。
「ウエーー」
もう、耐えられなかった。なんなんだ!この臭いは!俺は、臭いのする方向に足を向けた。このスペースの隅にある……扉。その扉の向こうに、刺激臭の原因がある…と、臭いの根源を突き止めるべく、俺は扉を開けた。そして、そして、そこに見えたものは……
ヒッチコックの映画、「鳥」のように、真っ黒な生物が、俺を目掛けて飛んできた!その正体は、ハエ。無数のハエが、俺を目がけて飛んできた。いや、襲ってきた!
「ウゲ-ー」
俺は扉を閉めるのも忘れて、5メートルも後ろに逃げた。
「なんなんだ!!」
俺はカディールに叫んだ。
「ラバトリーデス」
「はあ?便所???」
先ほどから発生していた刺激臭は、トイレの臭いだった。そう言えば、日本でも同じような場所に、トイレがある。トイレだとわかったが、なんでこんな臭いが?俺はちょうど、トイレに行きたかったので、その扉をもう一度開けて、中に入っていた。目にしみるような刺激臭!だが、事を終えるまでは我慢をしなくてはならない。俺は息を止め、ダッシュでトイレに入ると、便器に向かった。
急いで事を終えようとするが、焦ってなかなか出来ない。そうしているうちに、息が続かなくなってきた。「ヤバイ」と、思いながら、苦しみに耐え切れず、俺は思わず呼吸をしてしまった。と、その瞬間!
「オエーー」
もう、耐えられなかった。嗚咽しそうになり、思わず大便器のある扉を開けた。だが、だが……そこに見えたものは……
つづく…
※次回、第34話は7月13日(水)更新予定となります。