2011年07月27日
第36話 パキスタン・大丈夫です?
みんなが困っていた。パキスタンチームから支払いを拒否されているホテル。その料金を払えと言われて困る俺。その中間で思案しているシャヒット。
「ワカリマシタ・タカオサンハ・ハラウヒツヨウナイデス」
「そうだよな!!」
「ハイ・ソウデス。ワタシガソレヲツタエマス」
「よし!さすがはシャヒット!!」
「ハイ・デハ・オネガイシマス」
シャヒットは俺の前に右手を出した。
「はあ?」
こんな用件でも金を取るのか!!俺は腹立たしくなり、シャヒットをにらんだ。するとシャヒットは、
「ジョウダンデス・オカネハ・ダイジョウブデス」
と、笑顔で答えていた。俺の迫力も、シャヒットに伝わるようになったなと、俺は満足な気分だった。だが、俺はシャヒットの掌の中で、踊らされているだけだった。
さあ、それからのシャヒットはすごかった!
「てめえ!だれからお金を取ろうとしているんだ!!」
とでも言っているような(あくまでも想像だが)、激しい口調でフロントを捲し上げていた。さすがは川口仕込み。怖気づいたフロントは、二度と俺に、お金を要求することはなかった。それにしても……帰りの飛行機チケットの予約不備。ホテル宿泊代金及び食事代金の未払い。いったい、どうなっているんだ。俺はシャヒットを連れて、ドアのないタクシーに乗り込み、カディールの元へと急いだ。
そして、自宅兼道場に到着をすると、玄関のドアを鳴らし、カディールを呼んだ。カディールは玄関から出てきた。
「どうなってるの?ホテルのお金を払えと言われたよ!!」
「エ…ダレデスカ?」
「フロントに言われたよ!」
「ダイジョウブデス!・ノー・プロブレムデス」
「はあ? でも、困っていたよ!」
「パキスタン・ダイジョウブデス」
「なにが???」
カディールは、先ほどから不機嫌だった。その原因は、シャヒットの存在。俺がいつも従えているシャヒットを、カディールは好きでなかった。その原因の一つは、シャヒットが何者かわからないこと、そしてもう一つは、自分より日本語が上手なこと(笑)。とにかく、カディールはシャヒットの存在をうとましく思っていた。
「チケットモ・ダイジョウブデス」
「でも、予約が取れていないと言っていたよ!」
「ダレデスカ?」
「航空会社の人間が!」
「ダイジョウブデス・パキスタン・ダイジョウブデス!」
いったい、何が大丈夫なのか?この国に来て、金に絡む事件ばかりだ!いや、パキスタンに在住した教え子に聞くと、そこまで金に絡んだ話を聞いたことはない。と言うことは、俺の環境がおかしいのか?だが、当時はそんな憶測をする余裕もなかった…
「タカオサン・イマカラ・イキマス」
「どこに?」
「ワタシノ・トモダチノ・トコロニ…」
「はあ?」
カディールは、自分の車を駐車場から出すと、俺に乗るように言った。だが、シャヒットには、
「gujkkjhdy]
激しい口調だった。多分、「お前は帰れ!!」の、ような内容…シャヒットは俺に「カエリマス」というと、一人でどこかへ消えていった。
※第37話は8月3日(水)更新予定となります。