2011年10月12日

第46話 招かざる訪問者

 さてさて、一年近くも連載を続けてきたパキスタン紀行であるが、前回まではこの物語の序曲に過ぎない。どんなに辛いことがあっても、恐怖を感じることがあっても、後になれば笑い話として語ることの出来る内容ばかりだった。
 
 だが、あの闘いだけは、今でも笑い話とすることは出来ない。もし、私が負けることがあれば、日本柔道及びパキスタンでの地位を全て失う事になったのだからだ…。

 パキスタンのナショナルチームコーチとして招かれたのに、招かざる者達が…パキスタン滞在も一ヶ月を過ぎたころ、稽古中の私たちの前に現れたのは、謎の大男達。玄関へ入るなり大きな声で叫んでいた。だが、何を叫んでいるのか? その時は、自分に訪れる災難を、まだ予測はしていなかった。

 ジャンギルは、玄関で叫ぶ大男数人の前へと走ると、両手を広げて彼らの侵入を阻止していた。だが、にやにやと嫌な笑みを浮かべながらジャンギルと口論をする大男達。その中に、ひと際大きな男が、道場内の俺を見つけると、歩みを俺の方へ向けてきた。

 顔には堂々たるひげを生やし、身長は185センチ程度。体重は120キログラムもあっただろう。とにかく、彼の腕に組みつかれれば、俺などひとたまりもない立派な体格の持ち主だった。

 着ているジャージの上からでも、大胸筋と肩の三角筋が盛り上がり、ただものでないことは直感としてわかった。しかし、いったい何者なのか……。

 ジャンギルは、彼らに怒鳴っていた。多分、「何しに来た!?ここは、お前達が来る所じゃない!」とでも叫んでいるのか? 彼らの前に立つジャンギルは、90キログラムという堂々たる体格ではあったが、ひと際小さく見えた。

 そして、この中のボスと思われる男が、俺の前に立った。彼は、俺を指差し、「ファイト・ミー」というような、パキスタンなまりの無茶苦茶な英語を発してきた。つまり、「俺と闘え」ということか…。

 この情況を理解の出来ない俺は、ただ茫然と彼らの前で立ち尽くしていた。そこへジャンギルが来て、俺に説明をしだした。

「センセイ、アレハ、パキスタンレスリングチームデス」

 パキスタンのレスリングチーム? その言葉を聞いても、彼らが何をしにここへ来たのか、全く飲み込めない俺は、その後の彼らの予期せぬ行動など想像することなく、立ちつくすだけだった。

つづく…

次回、第47話10月19日(水)更新予定となります。



abc123da at 23:21コメント(2)トラックバック(0) 

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コメント一欄

1. Posted by 吉村   2011年10月13日 18:09
ついにアノ連中が来たんですね
この展開を待ってたんです
2. Posted by 白熊の親父   2011年10月13日 19:42
5 嬉しいです。
まだ連載しているんですね。
お疲れさまなんかいってしまってすいません。

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