2011年11月09日

第50話 もう殺るしかない!

 100㎏を超える体重が、仰向けになった俺の体にのしかかってきた。マウントを取られた状態で、相手は打撃こそ打ってこないものの、俺の体を圧迫し続けていた。やたらと俺の両肩をマットに付けようとするが、なんとかかわし続け、この先の思案をしていた。

 明らかに体格差のある二人。65㎏の俺は、大男の圧力により、段々とスタミナを奪われてきた。組んでいるだけでも、小さいほうがスタミナを奪われるのは格闘界の常識。ましてや、マウントを取られたままの状態で……俺の呼吸は荒くなっていった。

 レフリーも存在しなければ、ルールの打ち合わせもないこの試合。大男に、ストップをかけられる者は誰もいなかった。そんな中での試合であるから、大男はゆっくりと時間をかけて、俺の上で俺を押さえつけてきた。

 この試合。もし、終わりがあるとすれば、どちらかがタップした時だろう。そう考え始めた俺は、マウントの下にいながらも、次の一手を考えていた。ヤツをタップさせるためには……俺が目をつけたのは、ヤツの首だった。

 最初は、下から腕を狙おうかとも考えた。下からでも、十分にヤツのひじ関節を狙う技術は持っていた。だが……パワーに差がある。そう考えると、せっかくひじ関節を取ることが出来ても、パワーで押し返される可能性があると考えると……この戦法はスタミナを失うだけだと判断し、ひじ関節への攻撃は断念した。

 すると、残るはヤツの首。首は、いくら鍛えていても絞まる可能性は十分にある。体格差で劣る俺のパワーでも、俺の腕がすっぽりと首に巻きつけば、十分に気絶をさせることは出来る。作戦は首へと集中した。

 ただ、問題はどうやってこの体勢から逃れるか。首を狙うには、ヤツのバックにつく必要がある。しかし、ヤツは一流のレスラーのようだ。どう考えても、マウントを取られた体勢から、バックにつくという体勢に変化をする方法が見つからなかった。並の相手なら、ひとまず横についてその後バックへと移行をすることも出来るが、ヤツはマウントの体勢を緩めようとはしないし、圧力は先ほどにも増して強くなってきた。

 俺のスタミナもかなり奪われてきた。早く決行しなければ、相手の首を絞めつける体力さえ奪われてしまう。なんとかしなければ……。

 もし、相手が柔道着を着ていれば、下からでも絞めつける方法はいくつかあった。だが、ジャージ姿の相手に、同じ方法が使えるかどうか…。それでも、早くやらなければ、スタミナはどんどん奪われていく。

 もう、殺るしかない。考えている間に決行しなければ…失敗など恐れていては、この状況を打破することは出来なかった。そして、俺は徐々に、マウントを取られた姿勢をズラシながら、ヤツによって極められた下半身を抜く準備をしていた。

 一気に抜き、すかさず下からヤツの首に飛びついて、下からのネックハンギングに持ち込むことを狙っていた。そして、チャンスは訪れた。ヤツの脚が緩んだ瞬間、俺は一気に体を移動して、体勢を持ち上げてヤツの首に腕をまわした。

「極まった!」

 俺の勝利が見えてきた。後は、腕に力を入れるだけだった。だが……物事はそう、うまくいくことはなかった……。

つづく…


※次回、第51話は11月16日(水)更新予定となります。



abc123da at 23:57コメント(0)トラックバック(0) 

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