2011年11月30日
第52話 形勢逆転!
首から背中にかけて、しびれを伴う激しい痛み。落下した地点は、明らかにコンクリートだった。コンクリートにパワーボムで叩きつけられるなど、大日本プロレスの試合でも見ることは出来ないだろう。
コンクリートに落ちた衝撃で、大男の首に絡めていた腕はほどけ、バンザイのような体勢になった。仕方がない…受け身をとるためには腕を解くしかなかった。そして、状況は振り出しに戻った。
コンクリートに打ちつけられた激しい痛みを感じながら、覆いかぶさって来る相手に対して防御の姿勢に移るしかなかった。だが、その時。俺は相手の異変に気がついた。パワーボムをくらって形勢逆転の危機に陥っていたものの、相手の呼吸が荒い。そうか、いくら下敷きになったとはいえ、先ほどのフロントネックは確実に決まっていた…相手は、かなりのダメージとスタミナをロスして、俺の上に乗って休んでいるだけだった。
その状況を見逃すほど、素人ではなかった。このチャンスしかない……これが最後のチャンスだと確信すると、俺はすかさず相手の腕と脚を振りほどいて相手の横に付いた。そして、一気に相手の後ろへと身を移動していった。
俺が心配するほど、大男は全くの無抵抗だった。フロントネックで絞められていたとき、ヤツはヤツなりに必死にふりほどこうとしていたのだろう。ヤツのスタミナのロスは、俺の想像以上だったのだろう。俺は、難なくヤツの後ろに回ることが出来た。
さあ、再び形勢は逆転した。相手の後ろを取れば、ここから先は柔道のほうに歩があるだろう。首と背中に痛みはあるものの、俺はこの瞬間を逃したら二度とチャンスは来ないという背水の陣の心境だった。そして、大男の首に、後ろからゆっくりと手を入れていった。
大男は、首をひきしめて抵抗しようとするが、もう、蟻地獄に落ちたも同然……俺は勝機をつかんでいた。
つづく…
※次回、第53話は12月7日(水)更新予定となります。